事業用IT環境に必要なPCのタイプと特徴

解説

この記事の概要と目的

この記事は、小規模IT環境の構築手順という記事の「1.必要な機器と台数をリストアップ。」から「PCの選定」に絞った解説です。

目的としては、一般的にどういったタイプのPCがあるかと、タイプ別の特徴を把握することで、選択基準を明確に理解し、業務に最適なPCを選べるようにすることです。

より細かな業種ごと、あるいは用途別の最適な機種は、別の記事でさらに詳しく解説します。

デスクトップ

設置する場所に固定で据え置くタイプのPC。持ち運びすることはなく、性能や周辺機器の拡張性能を重視する場合、デスクトップPCを選択します。Apple製品ではiMacが該当します。

一体型

パソコン本体と、ディスプレイ(モニター)が一体となっているPCで、デザインと省スペース性を重視する場合に最適です。

長所

本体とディスプレイがひとつになっているため、セパレート型に比べて設置に必要な場所が小さくて済みます。本体とディスプレイをつなぐ配線が不要で、電源ケーブルも本体の1本だけあれば良いため、電源コンセントが一つで済みます。

キーボードやマウスも、最初からワイヤレスタイプであることが多いため、見た目がとてもシンプルですっきりしており、総じてデザイン性の高い洗練された印象の製品が多いです。

短所

デザインを重視することで、使い勝手に不便さが出ます。たとえば、電源ボタンの場所が分かりづらい、CD/DVDなどのディスクの挿入口がわかりづらい、USBメモリの差込口が本体裏側にしかない(※)など、ぱっと見の分かりやすさで劣ることがあります。

※USBメモリの差込口については、USBハブを接続しておくことで、いつでも前から差し込めるように工夫可能です。

また、性能に不足を感じた際の自力でのパーツ交換や、故障時の修理のしやすさについても、セパレート型より劣ります。セパレート型のように簡単にふたを開けて該当箇所へ手を入れやすい構造ではなく、ふたを開けてからも、更に細かく分解しないとパーツにたどりつかなかったり、そもそもふたを開けづらい機種もあり、基本的に自力で行えるのはメモリ増設・交換程度まで、となる事も多いです。

一体型という製品カテゴリとして、法人向けで販売される機種が非常に少なく、家庭向けとして販売されている機種がほとんどであることも、一体型PCの特徴です。そうなると、家庭向けPCの不要なソフトが搭載されていたり、台数をまとめて購入することが難しかったり、本体の保証が家庭向けのみだったり、サポート窓口が家庭向けしか使えなかったりといった様々な不利もあります。

セパレート(分割)型

本体とディスプレイが分かれており、実用性を重視する場合に最適です。一般的な事業用途ではこちらが多く選ばれます。Apple製品ではMac mini, Mac Studio, Mac Proが該当します。

長所

本体の各種ボタン操作や、USBメモリなどの外部接続する周辺機器の扱いやすさは、セパレート型の特徴です。ぱっと見で、どこにどんな形の接続端子があるか分かりやすく、形さえしっかり合わせれば、見たまま接続すればよいので、どこに挿すか分からないといったことは少ないです。

また、本体とディスプレイが分かれているため、設置場所の融通がききます。一体型の場合は、トータルの接地面積こそ少ないですが、本体とディスプレイがひとまとめになっている分、厚みがあり、奥行きを必要とすることが多いため、狭めのデスク上に置くと、意外と狭さや圧迫感を感じることがあります。

その点、セパレート型は、薄型ディスプレイだけデスクに置いて、本体を床(の蹴らない場所)に置いたり、デスクの脇に置いたりすることで、デスク上をより広く空ける事が可能です。機種によっては、本体が弁当箱程度の極小サイズな機種もあり、モニター裏への固定や、書類たてに収納してすっきりさせる、という選択肢もあるため、意外と設置の仕方に幅があります。

加えて、メモリやストレージ(SSD/HDD)などの性能に直結するパーツについて、交換や増設がしやすい機種が多いことも利点です。多くの機種が、ねじを数本外すだけで各パーツヘ手が届き、取り外しやすい構造になっています。それだけ修理をしやすい構造でもあるため、性能面の柔軟性に優れます。

製品として主流タイプであるので、選べるメーカーや機種が圧倒的に多いのも利点です。

また、一体型と違って、PC本体だけを単独購入でき、映像出力の性能に優れた他メーカーのディスプレイを組み合わせる使い方が可能という利点もあります。特に、印刷業、CGや映像制作の業種では、色を正しく管理出力する「カラーマネジメント」という処理が必要であるため、セパレート型であることが必須となります。

短所

一体型に比べて、デスク上や周りで場所をとります。本体とディスプレイが分かれているので、構造上やむをえません。ただし、機種によっては極小本体のPCもあり、実質ディスプレイ分だけで設置スペースが収まるものもあります。

また法人向け製品の場合、地味なデザインの機種が多く、お世辞にも「おしゃれなPC」とは言えません。一部メーカーで洗練されたデザインも見受けられますが、一体型で家庭向けに売られている機種からすれば、どうしても見劣りします。

設置場所とデザイン以外で、一般用途での致命的な欠点はありません。

ノート

持ち運びやすさや、設置の容易さ、またバッテリーを搭載しているおかげで電源障害(停電)への耐性もあり、これらを重視する場合はノートPCを選択します。

価格あたりの性能はデスクトップより劣りますが、コンセントやバッテリーさえあればどこでも運べるため、デスクトップのように設置場所を選ばない利便性があります。メインの執務場所から、会議室、外出先など別場所への移動も簡単です。

据え置き型

主に15インチ以上のサイズが据え置き型とされることが多いです。持ち運びよりも、画面の大きさ、操作性、頑丈さ、処理能力の高さを重視する場合に最適です。Apple製品ではMacBookシリーズの15~16インチが該当します。

長所

据え置き方は本体サイズが大きいため、ディスプレイのサイズも大きくなります。

15インチから上のサイズが据え置き用途として使われることが多く、特に小さな文字を見づらい視力の方は、多少の大きさや重さを我慢しててでも、据え置きタイプのPCを選ぶことが多いです。

また、面積が大きいため、キーボードに割り当てられるスペースが十分にあり、右側のテンキー(数字キー)を搭載する機種が多いことも特徴です。同じ理由で、USBの接続口、LANケーブル接続口、HDMIなどの外部ディスプレイ出力口、CD/DVDといったディスク読み書き装置など、外部接続端子が豊富にあることも特徴です。

本体内にも余裕をとりやすいため、十分な性能の排熱ファンを内蔵して効率よく放熱でき、処理性能を大きく左右するCPUなどの発熱しやすいパーツを高性能化しやすく、ハイスペックなノートPCが多くある特徴があります。高性能なゲーミングノートパソコンに大型機種が多いのも、この特徴を活かした結果です。

短所

サイズが大きいゆえに、重量が重たくなります。軽量モバイル型ノートPCが1kgを切る機種が多いのに対し、軽くても1.2kg程度から、主に2~3kgの間の機種が多いため、持ち運びについては面倒さを感じることが多くなります。ただし、据え置き用途と割り切れるなら、特に問題にはならないでしょう。

また、面積の大きなディスプレイを駆動させ、処理性能の高いパーツを使用する機種が多いため、本体に見合う大きなバッテリーを積んでいても、モバイル型ノートPCよりもバッテリーの持続時間が短くなる機種がほとんどです。

モバイル型PCがカタログ値で10時間以上バッテリーだけで使えるのに対し、据え置き型は3~5時間程度となることが多いです。ただしこれについても、普段は据え置きでしか使わず、コンセント接続で電源をとることが多いのであれば、用途次第で許容できる点となります。

モバイル型

14インチ以下、かつ重量が1kg前後より下の軽量な機種がモバイル型として利用されます。操作性よりも頻繁な持ち運びを重視する場合、こちらが適しています。Apple製品ではMacBookシリーズの13~14インチが該当します。

長所

薄さ、軽さ、持ち運びやすさ、10時間を超えるバッテリーの持続時間、これらがモバイル型PCでよく挙がる利点です。機種によっては、タブレットと変わらない薄さや、指先で楽々持てる軽さ、カバンへの収納しやすさなど携帯性に特化しており、外出や社内での移動が頻繁にある方には必須と言える選択肢となります。

画面の狭さが気になるという方もいますが、社内では画面が大きなPC用ディスプレイを外部接続し、2画面、3画面などのマルチディスプレイ環境で作業することができます。また、外出時でも10~13インチのモバイルディスプレイが別売りされていますので、必要に応じて一緒に持ち運べば、画面の狭さ問課題もクリアできるでしょう。

短所

サイズが小さいゆえ、画面の小ささと文字の小ささ、一度に表示できる情報量の少なさが欠点です。4Kディスプレイ搭載の機種であれば、多少文字が小さくても読みやすいですが、長時間の文字読みには向きません。ただこの点は、先の通り、外部ディスプレイを使用することで解消できます。

またキーボードも、機種によってはキーひとつひとつが小さく、押し込む深さも浅くなりがちであるため、長時間、大量に文字を打つ用途には向きません。テンキーもつかないことがほとんどなので、Excelでの数値データ入力は骨が折れます。この問題については、ディスプレイ同様、社内であれば、お気に入りのPC用キーボードを別に用意して外部接続することで解決できます。テンキーのみの別売りもあります。

タッチパッドのみでの操作に慣れが必要な点も、人によってはハードルとなりますが、外付けのマウス(有線/無線)を使うことで解消できます。

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